写真25 〜27 は、瀬戸の代表的な素地土(きじつち)の原料の木節粘土(きぶしねんど)、蛙目粘土(がいろめねんど)、砂婆(さば)です。写真28 は、九州の天草陶石(あまくさとうせき)です。木節粘土は、堆積粘土(たいせきねんど)で亜炭(あたん)等の炭化(たんか)した木のかけらを含むため木節粘土と呼ばれています。東海三県で主に産出されますが、瀬戸の本山(もとやま)木節粘土は、優れた可塑性(かそせい)が特徴で、世界的にも有名です。石膏型(せっこうがた)の微細な凹凸を確実に写し取ることができるこの粘土は、瀬戸のノベルティの生産には欠くことのできない重要な粘土です。

 蛙目粘土は、比較的大きな珪石粒(せきえいりゅう)(珪砂(けいしゃ))を含んだ堆積粘土で、雨が降って粘土が流れた後に、珪石粒が蛙の目のように残っている姿から蛙目粘土と呼ばれるようになりました。粘土と珪砂は約半分ずつ含まれており、水簸(すいひ)して粘土と珪砂を分離して、珪砂はガラス原料などに使用されます。蛙目粘土は可塑性が高く比較的豊富に産出したため全国に出荷されています。蛙目粘土も木節粘土と同様に炭化した木を含むためネズミ色に着色された粘土です。

 サバは、愛知県から岐阜県にかけて豊富に産出する風化花崗岩(ふうかかこうがん)で長石(ちょうせき)、珪石(けいせき)を多く含み、他に黒雲母(くろうんも)等を含みます。風化されており粉砕しやすいので、貴重な長石及び珪石原料となっています。天草陶石は、石英斑岩(せきえいはんがん)等のシリカ分が多い岩石が地下の深いところで熱水の影響を受けできたもので、セリサイト(粘土の結晶(けっしょう)名・絹雲母(きぬうんも))、珪石、カオリナイト(粘土の結晶名)でできています。セリサイトはカリウムを含む粘土のため、天草陶石だけでやきものを作ることができます。しかも鉄分が少ないため色が非常に白く、日本を代表する磁器(じき)の原料です。

 図5 は瀬戸の代表的な素地と有田の磁器素地のX 線回折図です。瀬戸のものはカオリナイト(粘土)と長石、珪石のピークがみられます。有田の磁器素地はセリサイト、カオリナイト、珪石のピークがみられ、瀬戸のものとはずいぶん異なることが分かります。

 図6 は瀬戸の有田の素地を焼成(しょうせい)したもののX 線回折図です。瀬戸の素地も有田の素地も焼成したものは、ムライト、珪石、ガラス相(そう)のまったく同じ成分になっていることが分かります。中国の景徳鎮(けいとくちん)の磁器もX 線分析を行うとほとんど同じ結果になります。このことから、原料が異なっていても瀬戸の素地も有田の素地も焼成したものは、不純物成分のため色が多少異なりますが、ムライトとガラス相と珪石になり、化学的にはほぼ同じ物といえることが分かります。
▲サバ(写真27)
▲木節粘土(写真25)
▲天草陶石(写真28)
▲蛙目粘土(写真26)
図5 素地土のX線回析図
図6 素地土 1280℃焼成試料のX線回析図